【熱中症のキホン】WBGTとは?現場の安全を守る「暑さ指数」を正しく知ろう

夏場の現場作業や屋外イベント、工場やスポーツの指導現場では、年々増加する熱中症リスクへの対策が求められています。しかし、「今日は30℃を超えていないから大丈夫だろう」と気温だけを頼りに判断していませんか?
実は、熱中症のリスクは気温だけでは判断できません。そこで、注目されているのが「WBGT(湿球黒球温度)」の指標です。

◾️WBGTとは何か?

WBGTとは、「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略で、熱中症の危険度評価するための指標として、国際的には広く用いられています。
このWBGTは以下の3つの要素を総合的に評価して算出されます。

  1. 湿球温度(湿度の影響)
  2. 汗の蒸発を通じて体を冷やす能力に関わります。湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体に熱がこもりやすくなります。

  3. 黒球温度(輻射熱の影響)
  4. 黒い球体の表面温度を測定することで、太陽光や照り返し、熱源などの輻射熱の影響を加味します。

  5. 乾球温度(気温)
  6. 一般的に「気温」と言われるもの。周囲の空気の温度を指します。

◾️なぜWBGTが必要なのか?

人間が暑さを感じたり、熱中症になる原因は、気温だけでなく湿度や輻射熱など複数の要素が複雑に絡み合っています。例えば、同じ30℃でも、
湿度が高ければ汗が蒸発せず、体温が下がらない
直射日光やアスファルトの照り返しがあれば、体に強い熱負荷がかかる
屋内でも空気の流れが悪いと、熱がこもりやすい
このように、「気温だけでは把握できない暑さの危険」を数値化したのがWBGTです。
つまり、WBGTは”人体への熱ストレス”を総合的に測る指標であり、熱中症対策を正しく行ううえで欠かせないものなのです。

◾️WBGT値の目安と対策レベル

WBGT値(℃) 危険度 行動の目安
31以上 危険 屋外活動は原則中止、熱中症多数発生レベル
28〜31 厳重警戒 激しい運動や重作業は原則中止、こまめに休憩と水分補給
25〜28 警戒 運動・作業の強度に応じて休憩、水分補給を徹底
21〜25 注意 熱中症の兆候に注意、適度な休憩を
21未満 ほぼ安全 通常通り作業可、油断せず継続的な管理を

特にWBGTが28℃を超えた場合は、作業強度を下げたり、ミストファンや送風機の導入、作業時間の短縮などの具体的な対策が必要になります。

◾️現場でのWBGT活用方法

  1. 携帯型WBGT計の導入
  2. 最近では、現場に持ち運びできるコンパクトなWBGT測定器が多く販売されています。数分で測定でき、簡単にWBGTを確認できます。

  3. 作業指示の判断基準にする
  4. 「WBGT28℃を超えたら休憩を15分ごとに取る」など、数値を基準とした安全ルールを作ることで、属人的な判断を避けられます。

  5. 作業報告や安全管理記録に活用
  6. WBGT測定値を記録しておくことで、労災対策や法的対応にも有効です。企業の安全管理レベル向上にもつながります。

◾️空調服やミストファンの効果を見える化

ミスト送風機や空調服などの熱中症対策グッズと導入する際に、WBGTの数値を使って効果を見える化することで、社内の説得材料になります。
例えば、導入前はWBGT30℃だった現場が、導入後に26℃まで下がった、という実測データがあれば、「この設備は効果がある」ということを定量的に示すことが可能です。

◾️WBGTと熱中症対策のまとめ

WBGTは気温だけでなく、湿度や輻射熱を考慮した「暑さの総合指標」
現場の暑さを正しく評価でき、熱中症リスクの判断に非常に有効
作業管理、安全衛生、設備投資判断など幅広く活用可能

◾️最後に 数値で守る”命”

夏の現場は、ほんの数℃の違いが命に関わるリスクを生み出します。
だからこそ「なんとなく暑い」ではなく、「WBGTという根拠ある数値」で判断することが重要です。
熱中症を未然に防ぎ、安心して働ける現場づくりの第一歩としてぜひWBGTの活用を進めてみてください。

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

関連記事